築40年以上のアパート経営は難しい?耐震診断が義務となる例も解説!

公開日:2024/09/15  

築40年

築40年以上のアパート経営には、さまざまな課題がともないます。老朽化による修繕費用の増加や、入居者の確保が難しくなるほか、耐震診断が義務づけられる場合もあります。この記事では、こうした経営上の困難や耐震診断の義務化についてくわしく解説し、必要な対策も紹介します。ぜひ最後までご覧ください。

築40年以上のアパートは旧耐震基準物件

日本は地震大国のため、建物の耐震性に関する基準も厳しく設定されています。現在の耐震基準は1981年を境に「旧耐震基準」と「新耐震基準」に分かれています。ここでは、「旧耐震基準物件」についてくわしく解説し、その問題点を探っていきます

旧耐震基準とは

旧耐震基準とは、1981年5月31日までに建築確認が適用された建物に適用される耐震基準を指します。当時の技術と知見をもとに設定された基準なので、新耐震基準と比べると耐震性に関する要求は低めです。

この基準では、震度5強程度の地震で倒壊しないことが求められていたため、それ以上の強い地震が発生した場合、倒壊の危険性が高くなります。管理しているアパートが旧耐震基準の建物か確認するには、建築確認の交付日を確認する必要があります。

建築確認とは、計画が建築基準法の規定に適合しているかどうかを着工前に行政が確認する手続きです。この確認が1981年5月31日以前に交付されていれば「旧耐震基準」、1981年6月1日以降に交付されていれば「新耐震基準」となります。重要なのは竣工日ではなく、建築確認の交付日が基準となる点です。

不動産市場への影響

旧耐震基準物件は、現行の基準を満たしていないため、不動産市場での評価も低くなる傾向があります。購入希望者や賃貸希望者は、地震に対する安全性を重視するため、旧耐震基準物件を避けるケースが増えています。その結果、旧耐震基準物件の資産価値は低下し、賃貸経営や売却に苦労するオーナーもいらっしゃるでしょう。

旧耐震物件に耐震診断・耐震補強は必要?

旧耐震基準で建てられた建物は、ある条件下において耐震診断が義務づけられています。耐震診断が義務となる物件の条件は、1981年6月1日以前に建築確認されたもので、かつ3階以上、1,000㎡以上の物件です。

これらの条件に該当する物件は、耐震診断が義務づけられており、1981年以降に建築された新耐震基準の物件に比べて、地震に対する安全性が低い可能性があります。

補強工事の費用の目安

旧耐震基準の建物を安全に使い続けるには、耐震診断を受けたうえで必要な補強工事をおこなわなければなりません。耐震補強の工事にはおもに4つの種類があり、それぞれに異なる費用がかかります。

外壁を撤去して補強する方法なら、費用は約13~15万円(幅910mm)、外壁を撤去できないときは室内から補強できますが、9~12万円(幅910mm)ほど必要になるでしょう

基礎部分のひび割れ補修などをおこなった場合、費用は1平方メートルあたり4~5.5万円、屋根の重量を軽くして地震の揺れを軽減する方法であれば、費用は1平方メートルあたり、1.5~2万円です。

物件の状態や規模によって変動しますが、耐震補強工事の総費用は、通常100〜150万円程度かかると考えておきましょう。

耐震診断・補強の重要性

旧耐震基準の物件、または築年数の経過した新耐震基準の物件も、経年劣化による構造の弱体化が懸念されます。耐震診断をおこない、その結果にもとづいて適切な耐震補強をおこなうことで、地震被害のリスクを大幅に低減できます。

入居者の安心・安全を守ることはもちろん、物件の価値を維持できます。耐震診断や補強工事には費用がかかりますが、国や自治体による助成制度や融資制度が利用できることがあるので、かしこく活用しましょう。

もし物件が被災してしまったら?オーナーの責任範囲とは

日本は地震大国であり、1997年の阪神淡路大震災、2004年の新潟中越地震、2011年の東日本大震災、そして2016年の熊本地震など、過去数十年で大規模な地震が何度も発生しています。

もしアパートが被災した場合、オーナーにはどのような責任が生じるのでしょうか?ここでは、被災内容によってオーナーが負う責任について詳しく見ていきます。

建物損壊による修繕義務

アパートが地震で損壊した場合、オーナーには修繕義務が発生します。これは民法によって定められており、「賃貸人は賃貸物件の使用・収益に必要な修繕をなす義務を負う」とされているためです。

しかし、損壊の程度によっては修繕義務が免除される場合もあります。たとえば、新築に等しい大規模な修繕が必要な場合、その経済的負担がオーナーにとって大きすぎる場合には、修繕義務を免れることがあります。この点に関しては、具体的な状況や損壊の程度によって異なるため、個別のケースごとに判断されることが一般的です。

土地工作物責任による損害賠償

災害で建物が倒壊して入居者がけがを負ったり、亡くなったりした場合、倒壊の原因がオーナーの管理責任であること、つまり「土地工作物責任」が認められることがあります。これにより、オーナーは損害賠償責任を負う可能性があります。

「土地工作物責任」とは、土地の工作物に瑕疵(欠陥)があり、その瑕疵によって他人に損害を与えた場合に、その工作物の所有者や占有者が負う賠償責任のことを指します。過去には、建物の耐震性に瑕疵があったと認定され、所有者であるオーナーに損害賠償責任が課された判例も存在します。

安全性確保の義務

オーナーには、賃貸物件の安全性を確保する義務があります。地震などの自然災害によって入居者が死傷した場合でも、その災害に対して適切な安全対策を講じていなかったと認められると、オーナーは損害責任を問われることになります。

とくに旧耐震基準の建物は耐震性が不足している場合が多いため、耐震補強などの対策をおこたってはなりません

まとめ

1981年以前に建築確認を受けた旧耐震基準のアパートは、耐震性において現行基準を満たしていないため、耐震性において不安があります。地震による被災は不可避なリスクですが、オーナーには賃貸物件の修繕義務や安全性確保の義務があり、それをおこたると損害賠償責任が生じることがあります。旧耐震基準の建物を所有しているオーナーは、耐震補強を含めた安全対策を早急に検討し、入居者の安全を第一に考えることが求められます。将来の地震に備え、事前の対策を講じておくことが大切です。

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