アパート経営するなら知っておきたい「インボイス制度」の基本と影響

公開日:2024/08/15  

インボイス制度

アパート経営を始める際、知っておきたいのが「インボイス制度」です。この制度は、適正な消費税額の確保を目的としており、不動産オーナーにとって重要な影響をもたらします。具体的には、消費税の仕入税額控除や賃貸契約に関連する手続きに影響を与えるため、理解しておくことが不可欠です。

インボイス制度とは

インボイス制度とは、一言でいえば「仕入税額控除の方式」を意味します。事業者が消費税の適用を受ける取引について、適格請求書(インボイス)を発行し、それをもとに仕入税額控除を行う制度です。

これは、消費税の透明性と正確性を確保し、不正防止のために導入されました。消費税の仕入税額控除を受けるためには、取引先から受け取る請求書が「適格請求書(インボイス)」として認められる必要があります。

請求書や納品書、領収書、レシートなど、複数の書面をインボイスとして扱うことが可能です。ただしインボイスを発行できるのは、インボイス発行事業者(適格請求書発行事業者)として国に登録された事業者のみです。

登録できるのは消費税の納税義務がある課税事業者に限られ、消費税の納税義務がない免税事業者は登録できません。免税事業者がインボイスを発行するためには、課税事業者としての登録を行い、消費税の納税義務を負う必要があります。

アパート経営にインボイス制度の影響はある?

アパートやマンションなどの個人向け賃貸住宅の賃料には、原則として消費税が課税されません。これは、住宅の賃貸借が非課税取引に該当するためです。そのため、アパート経営者がインボイス発行事業者として登録する必要は基本的にありません。

仮に登録したとしても、住宅の賃料には消費税がかからないため、インボイスを発行する機会もありません。もちろん、社宅も同様に消費税が課税されません。

そのため、借主が課税事業者であったとしても、インボイス登録の必要性はなく、アパート経営者はインボイス制度の影響をほとんど受けないといえます。

インボイス制度の影響を受けるケースもある

インボイス制度の影響を受けるケースがまったくないわけではありません。おもに「借主が課税事業者である場合」もしくは「対象の不動産が消費税課税対象である場合」に該当する場合は影響があります。

たとえば、オフィスビルや商業施設のテナントとして物件を貸す場合、その賃料には消費税が課税されます。この場合、借主である事業者は仕入税額控除を行うために、インボイスを必要とします。

貸主がインボイスを発行できなければ、借主は仕入税額控除ができず、その分の消費税を国に納める必要が出てきます。結果的に、借主がインボイスを発行してくれるほかの物件に移る可能性が高くなります。

インボイス登録を検討すべきケース

不動産関連の事業でインボイス制度の影響を受ける可能性がある場合、インボイス発行事業者として登録することを検討すべきです。事業内容によっては、消費税の課税対象となるため、インボイスを発行できるようにしておくことで、借主や購入者に対して競争力を維持することが重要です。

たとえば、テナントビルの賃貸やオフィススペースの提供、駐車場の貸し出しなどのサービスは消費税の課税対象となります。また、太陽光発電設備の貸し出しやアンテナ基地局の設置場所の提供も同様に課税対象です。

さらに、建物の売却に関しても消費税が課されるため、これらの事業をおこなう場合は、適切にインボイスを発行する体制を整えておくことが求められます。こうした準備をすることで、取引相手に対して信頼性を示し、ビジネスの競争力を高めることができます。

インボイス発行事業者になるメリット・デメリット

インボイス発行事業者として登録するかどうかは、不動産賃貸経営において重要な判断ポイントです。とくに課税売上があるオーナーにとっては、この登録がもたらすメリットとデメリットをよく理解しておく必要があります。ここでは、インボイス発行事業者として登録する利点と欠点について詳しく見ていきましょう。

メリット

インボイス発行事業者として登録することで、借主は消費税控除のメリットが享受できるため、インボイス未対応物件よりも選ばれやすくなります。とくに高賃料物件では、仕入税額控除ができることが借主にとって大きな魅力となり、結果として空室リスクを抑えられるでしょう。

またインボイス発行事業者になれば、消費税相当分を賃料に上乗せして請求する際に借主からの値下げ交渉を受けにくくなります。インボイスを発行できることで、消費税分を適正に徴収することが可能となり、値下げリスクも減らせるはずです。

さらに、インボイス発行事業者になることで、納め過ぎた消費税を還付してもらえる可能性があるため、キャッシュフロー改善に役立ちます。

デメリット

先述したとおり、インボイス発行事業者として登録するには、課税事業者にならなくてはなりません。つまり、消費税の納税義務が生じるため、免税事業者としての「益税」が得られなくなり、場合によっては収入が減少する可能性があります。

また、課税事業者になると、消費税及び地方消費税の申告が必要です。これにともない、事務作業が増加します。とくに、消費税の計算や申告手続きが複雑になるため、税理士への依頼や会計ソフトの導入などが必要となり、これらのコストや手間が増える点がデメリットといえます。

まとめ

アパート経営においては、個人向け賃貸住宅の賃料が非課税取引であるため、インボイス制度の影響はほとんどありません。したがって、インボイス発行事業者として登録する必要は基本的にはないといってよいでしょう。ただし、商業物件や事業用不動産を扱う場合は、インボイス制度の影響を受ける可能性があり、登録を検討することが重要です。借主のニーズや対象物件の種類によって登録の必要性や利点は異なるため、自分の事業形態に応じて、適切に対応しましょう。

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